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不思議な力『フォース』を操るジェダイ。
彼らはその人智を超えた力と頭脳で銀河に秩序を与える存在。
ジェダイの中の異端児、サマー・コニーは自ら鍛えたパダワン(弟子)達を集め、サークルを結成した。
その名も『夏組』。
サークルの主な活動は麻雀と飲み会だったが、ある日『悪の華』というダークサイドに傾倒した曲を聴いた事により、メンバーは音楽に目覚めた。
ライトセーバーを楽器に持ち替え、バンドを結成することになったのだ。
「いつかフォースの暗黒面に落ちるぞ!」
正統なジェダイ達からは苦言を受け続けるも、活動10年目の夏が来た・・・。
夏組メンバーと主な登場人物
▼マスター・サマー・コニー
通称:本部
担当:ヴォーカル、MC、トータルプロデューサー
はぐれジェダイ、夏組のリーダー。かつてのパダワン達をバンドメンバーにして、音楽活動を行っている。ライトセーバーをワイヤレスマイクに改造、ライヴハウス狭しと暴れ回る。
▼アナルキン・スカイウォーカー
通称:MR
担当:ベース、コーラス、イジラレ
マスター・コニーの元パダワンの中で最もフォースの強いジェダイ。予言によると彼は『選ばれし者』。「シスを倒し、フォースにバランスをもたらす存在」とされているが・・・。
▼ドゲンカ・セント
通称:Shogo
担当:ドラム、エブリタイムスマイル・グッドガイ
マスター・コニー自慢の優秀なジェダイ。車イジリ、MRイジリを愛して止まない。
▼オードリー・キレナシバーン
通称:Kunihiko
担当:ダンサー、ヴォーカル
ライヴで本部をサポートするジェダイ。夏組以外の活動も広く行っている。
▼トーモ・ヨッシー
通称:Yoshida
担当:ダンサー、ヴォーカル
長い武者修行から還ってきたジェダイ。本職はギターだが、夏組ではダンスに命を賭けている。
▼カイ・ハンセン
通称:K
担当:ギター、コーラス
公文書館の管理をしているジェダイ。この物語の編纂者。
▼マスター・リー
通称:Leeさん
担当:チーフマネージャー
ジェダイ評議会のメンバーで、サマー・コニーの師。評議会の中では唯一、異端ジェダイ集団夏組を擁護している。
▼メンドゥさん
この日の共演バンドの一つ『ゴルサント』のギター&ヴォーカル。ライヴ終了後、MRと意気投合する。
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scene1 |
銀河暦10万2008年8月16日...
夏組、2年ぶりに三島へ遠征。
この日は三島大社の祭があり、それに合わせてafterBeatで『夏祭Re☆Mix』というライヴイベントが行われる。
2日間で数多くのバンドが出演、夏組も貴重な時間枠を授けられた。
以前は必ず宿泊を伴った遠征だったが、スタジオリハ時にMRが「16日の夜は仕事で、終ったらすぐ帰る」と言い出した事もあり、ライヴ終了後、終電で帰る企画が持ち上がった。
キーボード担当のアイヴ・サキ、通称:Miyukiが不参加、男夏の日帰り旅行である。
三島まで電車で行くジェダイ。
唯一、ジェダイらしいマシンで向かうのはShogoだけ。
いつものようにMRの川崎から順番に乗り込み、小田原でKが乗ると東海道線組は合流完了。
MR、Yoshida、Kは席に座れず、立ったまま談笑していると、MRがおもむろに弁当を取り出した。
フタを開けるとサバ寿司・・・。
さらにペットボトルを取り出すと、その中身は日本酒・・・。
電車は揺れている・・・不安定なまま食べて飲むMR。
その光景、全てが面白い。
サバ寿司を食べ終えると、次はツマミのほや。
「(パクッ)うぅんっ!♪ウマイ。YoshidaとKも食べる?」
二人がやんわり遠慮すると、MRは悲しげな顔をした。
三島駅到着、Shogoと合流する。
本番までのスケジュールは、カラオケで新曲振付練習→スタジオリハ→会場入り。
本部が風邪による体調不良で全く元気が無いので、ややヘビーな流れである。
それとは対照的にMRは日本酒を飲んでゴキゲンだ。
不安要素を抱えた夏組に、フォースの暗黒面が徐々に近付いていた・・・。
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scene2 |
Leeさんは祭を楽しむため、足早に三島大社、商店街方面へ。
今年は裸足のジェダイ、イシダ・ジュンイチが招かれていた。
イシダはジェダイの掟を破って「不倫は文化だ」と言い放ち、評議会から追われている。
夏メンはカラオケ屋にて振付練習。
ダンスアドバイザーはMR。
新しく選曲された『羞恥心』はメンバー自身、楽しみで期待感のある曲。
これが決まればライヴの成功は約束されたようなものだった。
全員の意志統一で超意欲的練習を展開、この勢いをそのままバンドで爆発させるべくスタジオへ向かった。
振付練習中の一幕。
Yoshidaはダンスリーダー的役割を果たし、本部はダウン寸前、Kunihikoの動きはあまりに速く、カメラで捕らえ切れなかった。
さすがジェダイ...。
スタジオで一通り練習したところで、本部がノドの痛みを訴えた。
本部はイスに座って練習を見守り、リードVo.抜きで進める。
先ほどのカラオケもそうだったが、元気の無い本部に代わり夏組の『さぶ』リーダー、MRがスタジオでも率先して指示出しをする。
MRはライヴ前にゴキゲンになると飲み過ぎてしまうことが多い。
アルコールの過剰摂取はダークサイドに陥りやすいので注意が必要だ。
メンバーはこの後に来る悪い予感を漠然と感じ始めた。
「本部の声が出なくなる?」
「MRがベロッベロに酔っ払って弾けなくなる?」
スタジオリハ終了。
夏組はジェダイローブでなく、アロハとサングラスを着用。
円陣を組み、フォースを高めて会場へ乗り込む。
2年ぶりのafterBeat。
変わらぬ人々に嬉しさや安心感が込み上げる夏メン。
しかし、明らかに暗黒面の気配が強まってきた・・・。
やはりライヴは失敗するのか!?
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scene3 |
出番まではまだまだ時間がある。
とりあえず店の前に設置されたBARで飲む。
「ストップウォッチで5秒ピッタリに止めると生ビール無料!」
ジェダイにとってこんなものは子供だましだ...。
バックの3人がチャレンジする。
まずは、ハシリやすいギタリストK→ 4:86秒
夏組のタイムキーパー、ドラムShogo→ 5:07秒
そして今日、ノリにノっているMR→
3.84秒
どうしたんだ?一体・・・。
フォースに乱れが生じている。
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scene4 |
一日がかりのライヴは、昼から夕方にドラムセットを使わないミュージシャン、夜からはドラムありの大音量バンドが登場。
前半戦最後のミュージシャンは夏組が尊敬する夫婦デュオ『He&She』さん。
変わらず大人気であり、貫禄の演奏と独特の間のMCも最高だ。
ドラムが組み上げられ、後半戦に突入。
夏組の出番は後半の2番目。
セッティングをしている1バンド目、『ゴルサント』を見るとかなりイカつい面々。
夏メンより10才ほど上だろうか。
ギター&ヴォーカルの人はメンドゥさんというらしく、彼だけアロハを着ていた。
「あの人、ジェダイか?」
鋭い眼光、ウェーブのかかった長髪、日焼けした肌。
間違いなく夏組より『夏』組である。
すると本番直前にアロハを着替え、違うシャツで再登場。
ジェダイではないようだ。
ただ、フォースは強い・・・。
血走った眼を見開き、子供を睨み付け、ロックなMCで挑発する。
まさか暗黒面の気配はこの人達から出ていたのか?
夏メンが警戒する中、ゴルサントライヴはスタートした。
編成は3ピースで、曲はオリジナルのゴリ押しロック。
曲が終るごとにMCが入るが、その内容は「ションベンのキレが悪い」など、オジサンの悲哀系自虐ネタをロックテイストたっぷりに吐き捨てるものであり、緊張と緩和を巧みに使った手法は夏メンを爆笑させるに容易であった。
中でも完全に心をつかまれたMRはゴルサント、というよりメンドゥさんに大きく魅了されていた・・・。
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scene5 |
夏組もこの勢いをそのままいただき、2年ぶりのafterBeatライヴへ突入。
1曲目、夏組流スラッシュファンク『夏組のテーマ2』で「ただいま!」の挨拶。
続く曲は夏メンを音楽の世界に導いた『悪の華』で疑似ダークサイドを演出。
会場のボルテージもMAXへ。
本部もこの時のためにフォースを温存していたのか、風邪とは思えぬ暴れっぷり。
ムチャでピンチを切り抜けるのがマスター・コニーだ。
激しい曲が終り、多少落ちつくかと思いきや、まだまだ限界知らずのafterBeat...。
夏組の期待作『羞恥心』を繰り出すと、信じられないくらいの爆発的反応。
これはメンバーが抱いた大きな期待をさらに上回る反響であった。
イスの上に立ち上がった子供達も一緒に踊る。
サビでは会場全体での大合唱。
まさに「かいしんのいちげき!」と言える選曲。
当初の危惧が払拭され、その後も本部のMC、客イジリ、MRイジリ、小ネタの応酬で爆笑が起こり、ダンスシーンになれば子供達も合わせて踊る・・・。
この一体感は何なのだ!?
三島と夏組の波長はあまりにも合っている。
出番を終えたゴルサントのメンドゥさんもMRの前に座って観ていた。
ギラギラした眼でMRにじっと視線を送り、それに対してMRもギラギラした眼で返す。
常人には解らない、さりげないやり取りがあったようだが・・・。
そんな中、『ギンギラギンにさりげなく』スタート。
ソロ・ショウタイムが始まり、永遠のトップバッターKがステージ前方に出る。
同時にメンドゥさんも眼を大きく見開いてKを見たまま、ユラユラ近付いてきた。
Kは恐怖を感じたが、フォースを集中させて弾き切る。
それは他のメンバーのソロも同じだった。
しかし、MRは恐怖どころかメンドゥさんにアピールしながらチョッパー。
「あまり近付き過ぎてはいけない!暗黒面の気配を感じる・・・」
ライヴは最後の曲『ワンナイトカーニバル』まで、凄まじい熱気を帯びたまま終了となった。
アンコールが沸き起こるが、この日のセットリストにはアンコールを入れておらず、先ほど会場が爆発した『羞恥心』をもう一度披露。
お客さんが本物の『羞恥心』のポスターを掲げて応援してくれる楽しいハプニングも...。
こうして、『音楽』というフォースでお客さんに喜びを与え、お客さんからも『笑顔』という最高のフォースをもらえた夏組であった。
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scene6 |
メンバーが乾杯していると次のミュージシャンが登場。
夏組は全員アロハだが、こちらは甚平に身を包んだバンド『沢田deコロッケ』さん。
ソリッドで骨太なロックは、最前列に座っていた夏組メンバーをスタンディングで燃え上がらせた。
しかし、そこにMRの姿は無かった・・・。
KunihikoがShogoにアツアツのタコ焼きを食べさせてあげているシーン。
夏組メンバー、ほんのひと時の休息である。
熱狂の沢コロさんライヴが終り、メンバーは一旦外の空気を吸いに行く。
店を出ると路地の10mほど先にゴルサントのメンドゥさんと会話するMRの姿があった。
ゴルサントライヴ中に「俺達が気に行ったら後で声を掛けてくれ。そしたらビールを一杯・・・おごってくれ。ただ、ホントにおごってくれた奴は1人もいねぇ...」というMCで笑いをとっていた。
だが心酔し切っているMRは「貢ぎ物」という形でビールをご馳走し、メンドゥさんに接触を謀った。
これでメンドゥさんのせっかくのネタが台無しになったのも気にせず・・・。
それをうかがいながら、メンバーも外で飲んでいた。
すると2人がこちらに気付き、近寄ってくる。
MRの様子がおかしい。
血色が悪く、眼の瞳孔が開いて、ジャバ・ザ・ハットのような二重アゴとブクブクの腹が怪しく揺れている。
「みんな、おつかれ、こちらの方は、ゴルサントのメンドゥさん」
メンドゥさんは不敵に笑い、夏組に挨拶をする。
「!!!(間違いない!彼はシスの暗黒卿だ!)」
全員が身構える。
最も恐れていた事が起こってしまった。
シスとは、かつて滅びたはずの悪の暗黒教団であり、銀河の平和を脅かす存在である。
師匠と弟子の2人で暗躍し、弟子がいなくなれば新たに強大な力を持つ者を迎える。
それは心が弱い者ほど付け込まれやすい。
まさか夏組が狙われるとは・・・。
メンドゥさんは秘かに復活していた伝説のシス、ダース・ザンニョーだったのだ。
そしてダークサイドに堕ちたMRはその弟子となり、ダース・ベーションと名付けられた。
「なぜだ!?選ばれし者ではなかったのか!?」
メンバーの声はMRに届かない。
もうアナルキン・スカイウォーカーではなく、ダース・ベーションなのだ。
戦うしかない。
もちろんライトセーバーではなく、『トーク』という話術で。
正義の騎士たちと悪の戦士の戦いは壮絶を極め、1時間が経過した。
夏組にはタイムリミット(終電)がある。
何とかシスを倒し、MRをダークサイドから救い出し、帰還しなければならなかった。
しかし、ダース・ザンニョーの強大な力の前に少しずつ押され、撤退を余儀無くされた。
敗走する途中にLeeさんを拾い、お客さん、共演者、afterBeatスタッフとの別れを惜しみつつ、夏組は三島を離れた。
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scene7 |
「MRがダークサイドに・・・」
帰りの東海道線の中で、メンバーは悲しみに暮れていた。
仲間同士で戦ってしまうことも運命だったというのか?
もう夏組は活動できないのか?
すると、本部の元にメールが届き、プッと吹き出す。
メンバーにも次々と届いて、それを見るなり全員爆笑。
送り主はMR。
どうやらMRのクドさは、さすがのメンドゥさんにもちょっとうるさくなってきたらしく、いきなり破門されたらしい。
正気に戻ったMRからのメール文面は、
「おまえら!また置いてきやがって!!やりすぎだろっ!!!」
という、いつもの怒りメールであった。
これで安心して帰れる。
夏組もまた続けられる。
みんなに明るい笑顔が戻った。
しかし、このメールに返信したメンバーは誰もいなかった...
そして東海道線は、真夏の夜を走り抜ける・・・
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