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HR/HMアルバムの1曲目は速い?

多くの評論家をはじめ、私Kなどの一般リスナーが語るHR/HM
アルバムの約束事の一つに「1曲目は速い曲」というのがある。
このコラムではその一点にスポットを当てて、ほんの少し
マニアックに語っていきたいと思います。

※文中の「HR/HM」はハードロック/ヘヴィメタルの略で、
「ヘビメタ」と読んでもらって構いません。
('08.1.27)


 



今まで何百枚かのHR/HMアルバムを聴いてきて、確かに速い曲が一番最初にきてるものは多い。
が、当然ながら色んなタイプの曲がある。
「1曲目は速い曲」というのは約束事ではなく定番の俗説といったところか。

個人的な見解として1曲目はスゴイ重要であり、インパクト面はもちろん、「このアルバム聴こうかなぁ」と思わせるモチベーション(動機となるもの)の役割も担っている。
速くてカッコイイ曲を1曲目に置いたアルバムは自然と手に取る回数も増える。

ちょっと語りたくなったので、自宅でHR/HMのCDを聴く時には「1曲目は速いのか?」などの要素を軽くチェックしていた。

しかしCDを全く聴かない日も当然あるので、あまりデータが集まらない。
面倒臭くなったのでガンガン調べ上げることにした...。

まあ結果を見ていただきましょう。



1曲目は速い?
速い! 22.4%
リフなどが速い 12.0%
部分的に速い 10.0%
""(ヌル) 55.6%

以下のような区別で四択。だいたいで...。

▼速い!
いわゆる、速い曲。絶対的なテンポで計るのではなく、そのアーティストの曲群をみて相対的に分類してます。

▼リフなどが速い
テンポの速さは無いけど、リフ、フレーズ、パターンなどが速くてスリル感を出している曲。

▼部分的に速い
速いパートが少しでもある曲。

▼""(ヌル)
以上3つのどれにもあてはまらない曲はヌル(無)としました。



1曲目のタイプ
勢い系 53.2%
聴かせ系 23.6%
序曲・SE系 15.2%
ドラマ系 8.0%

▼勢い系
文字どおり、アルバムに勢いをつけるようなテンションの高い曲。

▼聴かせ系
勢い系とは逆に、あまりガツガツせず、余裕をみせてる曲。

▼序曲・SE系
インストルメンタル序曲、雰囲気を醸し出すSE、コンセプトアルバムでの語り、などなど、形態は様々だが2曲目以降につなげる小曲であることが多い。

▼ドラマ系
勢い系でもあり、聴かせ系でもある、緩急・展開を使ったドラマティックな曲。



2曲目のタイプ
落ちつかせる曲 40.8%
そのままの流れ 30.4%
序曲・SEから受け継いだ曲 15.2%
スピードUPして勢いを増す 13.6%

▼落ちつかせる曲
1曲目で上げたテンションを下げ、落ちつかせるイメージの曲。

▼そのままの流れ
1曲目と似たようなタイプの曲。

▼序曲・SEから受け継いだ曲
1曲目が序曲・SE系の場合は主にここに分類。
実質上の1曲目であることが多い。

▼スピードUPして勢いを増す
主に1曲目が聴かせ系の場合に多いタイプだが、勢い系の曲からさらに激しくなるパターンもよくある。







さて...
純粋に「速い!」曲が22.4%しかない。
比較的スピードメタルバンドのアルバムが多いので、かなり結果に偏りがあると思われたが...。
「リフなどが速い曲」と「部分的に速い曲」を足しても、速くない曲の方が多いという、意外な結果。

1曲目に速い曲が多いように感じる理由として、「速い曲には大きなインパクトがあって印象に残りやすい」ということが考えられる。
また、2曲目「序曲・SEから受け継いだ曲」(15.2%)の中に速い曲が多く、それが実質的に1曲目の役割をしているのも印象度を上げる要因。
さらに冒頭で個人的見解として書いたように、速くてカッコイイ曲で始まるアルバムをいっぱい聴いてることによる思い込み。

標題『HR/HMアルバムの1曲目は速い?』の答えを数字的にとらえれば、「必ずしもそうではない。どちらかといえば少数派」となる。


1曲目のタイプを見ると、勢い系の曲が半数を占めている。
たとえ速いパートを用いた曲でないとしても1曲目でテンションを上げていきたい意図は同じか。
それでも53.2%だけというのは少ない気がしてしまう。

ちなみに「聴かせ系」には「しみじみと良いメロディを聴かせる」曲だけでなく、ベテランバンドのどっしりとした貫禄ある曲や単に力を抜いた曲も分類している。
「血気盛んな新人HR/HMバンドの1stアルバム」とかには絶対無い、余裕の1曲目。
23.6%だから、意外に多いかな。


HR/HMアルバム2曲目のよくあるイメージが、「落ちつかせる曲」「序曲からのスピードナンバー」など。
「ミドルテンポの3連」なんていう具体的なイメージや、「アルバムタイトル曲が多い」という、曲調とは関係ない話まである。
こういうのを調べ出したらキリがない...。
ただ、「落ちつかせる曲」は40.8%と、実際のイメージ通りに一番多い。


ここからは色々なタイプの1曲目を、実際のアルバムを例に挙げて紹介します。



スレイヤー(アメリカ)
『レイン・イン・ブラッド』(1986年)
ギターリフで始まり、絶叫と共に曲が疾走していくスラッシュメタルの王道パターン。
速い曲のあとの2曲目は「落ちつかせるミドルテンポの3連」が始まるが、すぐさまスピード地獄へ曲展開。
部屋そうじの時にこのCDをかけると作業効率が飛躍的にUPする。
1は速い?:速い!
1のタイプ:勢い系
2のタイプ:そのままの流れ


セックスマシンガンズ(日本)
『セックスマシンガン』(1998年)
序曲に対して特に名前も付けず、曲分けもしてない場合は普通に1曲目の一部として冒頭に組み込まれる。
1.SEX MACHINEGUNはその典型パターンで、重厚なイントロダクションから、ヘヴィメタルシャウトと共にスピードナンバーが始まる。
その他の曲もHR/HMの定番要素が詰まっていて、上質な「ヘビメタごっこ」が展開されている。
1は速い?:速い!
1のタイプ:勢い系
2のタイプ:落ちつかせる曲


マノウォー(アメリカ)
『勝利の鋼鉄』(1992年)
HR/HMではクラシック音楽のような大作を平気でアルバムにボーンと入れてくる。
6、7分のものから15分を軽く超えるような超大作まであるが、そんなクドめの曲を一番最初に持ってくる暴挙に出るアーティストも...。
1曲目、トロイ戦争を題材にした組曲は28分37秒。
目をつぶって聴いているとブラッド・ピットやオーランド・ブルームの姿・・・は、特に出てこない。
1は速い?:部分的に速い
1のタイプ:ドラマ系
2のタイプ:落ちつかせる曲


オジー・オズボーン(イギリス)
『月に吠える』(1983年)
オジーの曲には、「ミドルテンポだけどギターリフがスピーディでカッコイイ曲」が多い。
「バカだもん!」の空耳で有名な1.BARK AT THE MOONも、三代目ギタリスト、ジェイク・E・リーの切れ味鋭いリフが冴え渡る。
オジーのアルバムでは珍しく、2曲目ですぐに悲しげで暗い曲へ。
1は速い?:リフなどが速い
1のタイプ:勢い系
2のタイプ:落ちつかせる曲


イングヴェイ・マルムスティーン(スウェーデン)
『アルケミー』(1999年)
冒頭から天才イングヴェイ節、クラシカルな速弾きパッセージの連続でスピード感を出している。
1曲目がインストルメンタル曲の場合、序曲となる場合が多いけど、この1.BLITZKRIEGは完全に独立したギター弾きまくり曲。
万能人ダ・ヴィンチを歌った2.Leonardoは、うって変わって荘厳であり、一瞬にしてルネサンス時代へ誘われる。
1は速い?:リフなどが速い
1のタイプ:ドラマ系
2のタイプ:落ちつかせる曲


ガンズ・アンド・ローゼズ(アメリカ)
『アペタイト・フォー・ディストラクション』(1987年)
1.WELCOME TO THE JUNGLE、何かが起こりそうな予感のするシリアスなイントロから、脳天気なパーティロックが始まった時は思わずコケたが、ロックの粋を全て集めたような、中毒的な勢いとトリップ感がある。
まさにこのアルバムを象徴するような1曲目。
1は速い?:""(ヌル)
1のタイプ:勢い系
2のタイプ:そのままの流れ


レッド・ツェッペリン(イギリス)
『IV』(1971年)
ポリリズムや変拍子を使ったヘヴィなリズムの上をロバート・プラントがソウルフルに歌う、ツェッペリンの代表曲のひとつ、1.BLACK DOGがいきなりバンドの風格を見せつけてくる。
貫禄のパフォーマンス後、2.ROCK AND ROLLを軽快に飛ばしてくる展開がニクい。
1は速い?:""
1のタイプ:聴かせ系
2のタイプ:スピードUPして勢いを増す


ハロウィン(ドイツ)
『守護神伝 第一章』(1987年)
1.INITIATION→2.I'M ALIVEは、「重厚な序曲から速い曲」という流れの超・典型的パターン。
ハロウィンのようなジャーマンメタル勢を始め、メロディアスで大仰な曲構成が得意なアーティストはよく使う手法。
ちなみにINITIATIONとは「入門するための儀式」「通過儀礼」という意味。
私Kもこれで「入信」しました。
1は速い?:""
1のタイプ:序曲・SE系
2のタイプ:序曲・SEから受け継いだ曲


X(日本)
『ジェラシー』(1991年)
前作『ブルー・ブラッド』(1989)では、上記ハロウィンのような「重厚な序曲から速い曲」という流れを用いたが、このアルバムはYoshikiのピアノ小曲から速い曲へ。
クラッシック音楽を基調とした美的感覚の強い様式性は、海外のクラシカル路線HR/HMアーティストと比べても異彩を放っている。
1は速い?:""
1のタイプ:序曲・SE系
2のタイプ:序曲・SEから受け継いだ曲



以上、有名アーティストの名盤を中心に紹介。







ここまで1曲目について語ってきましたが、しかし...

残念なことに、いくら1曲目がカッコイイからといってそのアルバム自体もカッコイイとは限らないのはご承知の通り。
アルバムを手に取る回数は多くても、途中で「ポチッとな」とStopボタンを押してしまうものや、飛ばし飛ばし聴いてしまうものもある。
(そもそも「アルバムを手に取る」行為は、大容量携帯音楽プレーヤーやパソコンで音楽を楽しむ現代にはあまりしないと思うけど...。私KはいまだにCD棚から一枚一枚「アルバムを手に取」っています)

その点の因果関係も含め、また違った角度からHR/HMアルバムについて語る...かも。



◆今回チェックしたアーティストの国籍(地域)内訳
ベスト盤、ライヴ盤、企画ものを外し、'70年代から2007年までのオリジナルアルバムをチェック。
アメリカ 33.6%
イギリス 14.8%
ドイツ 16.4%
北欧 20.0%
その他、欧州 4.0%
日本 6.8%
上記以外の国 4.4%



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